当事務所の所属弁護士8名によるコラム(ブログ)です。

妖しい法律(2) ~賭博の何が悪いのか?~

ご存じかと思いますが、ギャンブル(賭博、賭け事)をすると捕まります。

なぜなら、刑法第186条が
賭博をした者は、五十万円以下の罰金又は科料に処する。
ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。
と定めているからです。
ただし書による処罰範囲の限定はあるものの、賭博は日本では立派な犯罪なのです。
実際、野球賭博などで逮捕される人が有名人にもときどきいますよね。

一回ではなく何度も賭け事をしていると、罪が一気に重くなります。
刑法第187条第1項が
常習として賭博をした者は、三年以下の懲役に処する。
としているからです。


ちなみに、ヤクザが賭博場を開くような場合は
  「 賭博場開張等図利罪 」
と言い、
  「 三月以上五年以下の懲役 」
という重い罪になります(同条第2項)。
つまり、通常の賭博罪や常習賭博罪は、別にヤクザを取り締まるための法律ではなく、
一般の人がやる賭け事を取り締まるための法律なのです。

市民が賭け事に熱中すると、それを原因として丸儲けする詐欺師が出たり、
逆に身を持ち崩して破産したり、家族や他人に迷惑を掛けたり、
お金のために犯罪に走ったりする人がたくさん出るので、
刑罰で賭け事自体を禁止しているわけです。

同じ趣旨で、刑法第187条は、
なんと 「宝くじ」 の発売も取次ぎも授受もすべて犯罪として取り締まっています。
(宝くじのことを法律で  「 富くじ 」  と言います)


でも、……それって、おかしくないですか?


国営の競馬も競輪も競艇も、立派な賭け事です。
国が賭け事をTVコマーシャルを使ってまで推進して荒稼ぎしているのに、
一般人が賭け事をしたら犯罪だなんて、すごく卑怯だと思いませんか?
銀行が宝くじを売るのは、何故許されるんですか?

これらは、国の収入確保のために、
法律に基づいて厳しいルールのもとに運営しているからOKなんだそうです。
……それなら、普段から税金をきちんと払っている人が、
身を持ち崩さない範囲で一定のルールに基づいて賭け事を楽しむのは、
どうして犯罪なんでしょうね。

パチンコもパチスロもそうです。
あれは景品交換ということにされていますが、
一般には決して流通しない無価値な景品を隣の別の店(?)で現金に引き替えています。
誰でも知っています。
パチンコ破産者も大量に出ており、社会問題になっています。
けれども、警察も検察もパチンコ・パチスロを賭博罪としては扱いません。
ずるくないですか?


大人の皆さん、これを子どもたちに対して、堂々と胸を張って説明できますか?


貧困問題について積極的な活動をする弁護士は、
パチンコ・パチスロの規制を訴え、カジノ法案に反対しています。

私は、何でも規制や禁止をすればいいとは思いません。
大切なのは自己管理であり、平等で公正でわかりやすいルール(法律)です。
そのために、 妖しい法律は、直ちに改めるべき です。


刑罰法規は、最小限にして明確、かつ、公正、公平でなければなりません。
この場合にまず改めるべきは、刑法の賭博罪のほうです。
そのうえで、賭博全般に関する新しいルールを皆で考えるべきです。

賭博罪を残したままでカジノの合法化を大まじめに論じるなんて、ナンセンスです。



※ 「妖しい法律」シリーズは
個人のブログサイト 「弁護士吉岡毅の法律夜話」( http://bengonin.com/
で (その1) を書いており、 (その3) 以降の続きも書く予定です。