雑感
依頼者の方から、「事件が沢山あって、ごちゃごちゃになりませんか?」と尋ねられることがよくあります。確かに、たとえば離婚事件で言えば、最近の傾向としては、長年の夫によるDV、モラルハラスメント、夫の身勝手な言動に耐えかねて、妻が離婚を決意する熟年離婚、幼い子どもの親権を奪い合う壮絶な若年離婚が多いと言えましょう。
しかし、依頼者の方々に個性があるように、個々の事件にも似ているようでいてそれぞれの顔があり(私は、密かに、各事件に、その顔にちなんだ命名をしています)、不思議とごちゃごちゃにはならないものです。
離婚事件の代理人という仕事は、依頼者の方がこれまで歩んで来られた人生を共に辿り、離婚後の生活設計を共に考えるという、私にとっては、非常に気の重いものです。
雰囲気を察知し、幼いながらも精一杯両親を気遣うお子さんたちの姿を見ると、胸が痛みます。
ご夫婦の間に生まれた大切なお子さんです。ご夫婦がどんなにいがみ合っていようとも、お子さんたちの心の負担を少しでも軽くするよう、この点では、協力し合っていただきたいものです。
相談に来られた当初は、自信を失い、思いつめて精神を病み、将来への不安を訴えていた依頼者の方が、徐々に自信を取り戻し、決着がつくころには、気持ちの整理もつき、誇りをもって積極的に明日への一歩を踏み出そうとする姿を拝見すると、「幸あれ」と願わずにはいられません。
ところで、これは、離婚事件の依頼者の方に限られないのですが、調停の待ち時間や移動の時間中に、依頼者の方とする雑談は、私にとっては有意義なものです。
その方の思いがけないお人柄や、ものの考え方に触れることができるからです。
特に、従事されている仕事について伺うのが好きです。
このときばかりは、皆さん、本当に生き生きとした表情で語ってくださいます。
私の未知の分野のお話を伺うことは、視野が広がって楽しいし、全く別の事件で、「そういえばあの時、あの方が、ああ言っていたっけ。」とふと思い出し、そのことが事件解決の意外なヒントになった経験が何度かあるのです。
ともあれ、ごく稀にではありますが、事件が解決した後も、依頼者と代理人という関係を離れて、個人的な親しいお付き合いが続くことがあります。
弁護士という仕事から生まれた貴重な財産のひとつです。