当事務所の所属弁護士8名によるコラム(ブログ)です。

民事調停

2006年4月から、地方裁判所・簡易裁判所の民事調停委員をやっています。

普段は弁護士として、一方当事者の代理人となって活動していますが
調停委員として調停に臨むときは
公平・中立的な立場に身を置くことになります。



ところで、家庭裁判所での家事調停(離婚、財産分与、遺産分割etc.)は
比較的よく知られていますが
地方裁判所・簡易裁判所での民事調停は
あまり知られていないようです。


裁判所が最終的に判決という形で
証拠に基づき白黒決着をつける訴訟(いわゆる裁判)と異なり
民事調停は、あくまでも話し合いによる紛争解決をめざすもので
この点では家事調停と同様です。

したがって、当事者双方が互いに譲り合って合意に達しないかぎり
調停は不成立とならざるを得ません。

この辺りが、民事調停の限界といえます。


一方、民事調停の特質は
何といっても紛争類型の多彩さと解決方法の柔軟性にあります。

この点、裁判所も
事件の類型に応じて専門の調停委員を配置するようにしています。

すなわち
民事調停においては
一つの事件につき、2名の調停委員と1名の民事調停官(裁判官)
で調停委員会を構成し、紛争解決にあたることになりますが
(民事調停官(裁判官)は多くの事件をかけもちしていますので
普段は2名の調停委員で対応します。)
通常、2名の調停委員のうち
1名は弁護士、他の1名はその紛争類型に応じた専門家
が担当することになります。

例えば、
建築紛争事件における1級建築士
医療過誤事件における医師
借地借家事件における不動産鑑定士
労働事件における社会保険労務士
などです。


このように、民事調停では
紛争類型ごとに専門家の調停委員が加わりますので
中身の濃い話し合いが可能ですし
柔軟な解決策を見出すことも可能です。

また、費用(印紙代)も訴訟の半分で済みますし
もちろん時間も訴訟に比較し短くて済みます。

前述した限界はありますが
もっともっと利用されてもいい制度ではないでしょうか。