当事務所の所属弁護士8名によるコラム(ブログ)です。

改憲、本格的に始動

第1次安倍政権下の2007年5月、野党が反発するなか、国民投票法が強行採決で成立した。

それから7年後の本年5月9日、
投票年齢を18歳以上に引き下げる改正国民投票法が、
与野党7党の賛成により衆議院本会議で可決され
憲法改正が本格的に始動することとなった。

船田自民党憲法改正推進本部長は、
改憲を否定しない与野党7党の枠組みで憲法改正原案を策定し、
各党が賛同できそうな内容ごとに改正案を分割して国民投票を五月雨式に実施する
と述べ、
 国民に改憲慣れをさせて、
 憲法96条(憲法改正の発議要件の緩和等)の改正、
 続く本丸の9条改正に持ち込む
という思惑をにじませている。


国民の間で憲法について大いに議論を深めることは大切なことだと思う。


しかし…。

今回の国民投票法の改正に際し、
同法の大きな問題点であった
・最低投票率の定めがないこと と
・周知期間について
は全く議論もされなかった。

最低投票率の定めがないということは、
選挙の投票率の低さからすれば、
有権者の半数にも満たない賛成で憲法が改正されてしまう事態もあり得る。

周知期間が発議から60日以降180日以内で十分な議論ができるとは到底考えられない。

安倍政権の強引な手法のもとで、
このような問題点を残したまま国民投票が実施されることのないよう、
より一層警戒を強めなければならないと思う。


民主主義という制度は、選挙という民主的な手続きによって
独裁者を生んでしまう危険を孕んでいる。

だからこそ、過半数の横暴を認めない、
民主的に生まれた権力であっても、国民が作る憲法によって制約されることにしたのである。

改憲を議論するにあたっては、改めて、
 「憲法とは、国民が権力の側を縛るものであって、
 権力の側が国民に行動や価値観を指示するものではない」
ことを肝に銘ずべきである。