当事務所の所属弁護士8名によるコラム(ブログ)です。

刑事裁判と補償 (前編)

刑事補償や少年補償という制度をご存じでしょうか。

刑事裁判(少年審判)のため、身柄を拘束された方が
結果として無罪と認定された場合
その裁判のために
本来必要のなかった身柄拘束という重大な制限を受けたことに対し
相応の補償を金銭で行うことによって
公平を確保し、人権保障を図る制度です
(憲法40条、刑事補償法、少年補償法)。

以前に私が経験した、少年補償に関する話です。




その少年A(当時、中学生)は、共犯少年B(同じく中学生)と一緒に
ある重大な罪を犯したとして、警察に逮捕されました。

Aは逮捕直後の警察での取調で、その事実を否定しましたが
取調官から
 「否認しても無駄だ」
 「言わないとどんどん(身柄拘束が)長くなる」
等と言われて不安になり
仕方なく犯罪の成立を認める供述をしてしまいました。

その後、私がAの弁護人に選任されてから否認に転じ
それ以降、最後まで一貫して否認し続けました。

共犯者とされた少年Bも、捜査時の供述では自白をしていましたが
裁判になってから否認に転じ
取調べの過程で警察官から自白の強要があったことを
具体的に供述しました。

Aの母親は一貫して否定し続ける我が子を信じる一方で
身柄拘束され、裁判にかけられている現状に悩まされ
体調に異変が生じました。
そのような中、仕事を休みながらAとの面会を繰り返しました。

そして、56日間にも及ぶ身柄拘束を受けた後、出された裁判所の結論は
 「非行事実なし(無罪)」。


このような事案で、その少年に認められた補償額は
 11万2000円
でした。
1日あたり 2,000円 の計算になります。

(次週に続きます)