当事務所の所属弁護士8名によるコラム(ブログ)です。

刑事裁判と補償 (後編)

≪ 前回の続きです ≫

(11万2000円という)額をどのように評価するのかは人それぞれですが
私としては、あまりにAやその家族を軽んじた判断としか思えませんでした。
1日2,000円払えば、国は無実の国民を拘束してもいい
と言われているような気持ちになりました。

すぐに裁判所に対して異議の申し立てをしましたが
裁判所から返ってきたのは
「変更を認めない」旨の記載をした、たった1枚の紙でした。
そこには、変更を認めないことの理由さえ記載されていませんでした。



警察も検察も人間の組織である以上、ミスを犯しうることは当然です。
だからこそ、今日のような裁判制度が確立しています。
その裁判の場で無罪が発見されたことは非常に喜ばしいことです。

しかし、その裁判の裏では
中学生という精神的にとても未成熟な人間に対して
自白を強要する取調べが繰り返され
約2か月間にもわたって身柄を拘束された上
苦痛な裁判を受けることになったという事実があります。

また、これから生活を送る上でも、様々な障害が出てくるかも知れません。
そのようなことを最大限考慮に入れて補償をすることが
冒頭の少年補償手続の目的に適うものであるはずです。
11万2000円では、仕事を休んで面会に行った母親の
給料の減額分にもならないかも知れません。

このような現実を見ると
日本という国は、まだまだ不十分であるという事を痛感させられます。
そして、一弁護士として
理不尽な現実に対しては辛抱強く戦っていかなければならないことを
強く感じます。