当事務所の所属弁護士8名によるコラム(ブログ)です。

最近の最高裁判例のご紹介

お勤めをされている方にはなじみ深い 「有給休暇」 ですが
その取得のための要件に関して、
労働基準法39条
基準となる期間
(雇い入れの日から6か月の継続勤務期間、
 または、
 その後の各1年ごとの継続勤務期間)
において、
「(休日を除く)全労働日の8割以上出勤した」労働者に対して、
翌年度に所定の日数の有給休暇を与えなければならない
旨を定めています。

この点について、最近、
注目すべき最高裁の判決がなされましたので、ご紹介いたします。
(本年6月6日最高裁第一小法廷判決)


 
事案は、
  会社から解雇を宣告され2年余り就労できなかった労働者(以下「原告」)が、
  解雇が無効だと主張して裁判で争った結果勝訴して、
  もとの会社に復職した後に、
  会社に対し計5日間の有給休暇の申請をしたところ、
  認められなかった(欠勤扱いとされ、その分の賃金も支払われなかった)
  ことに対し、改めて裁判で争った
というものです。

会社側は、
解雇後、解雇無効の判決が確定するまでの間の不就労期間については、
労働基準法39条にいう全労働日に含まれないと解釈すべきであり
したがって
原告の今回の有給休暇の申請は要件を満たしていないから無効である
といった主張をしました。

このような会社側の主張に対し、最高裁は
無効な解雇の場合のように
労働者が使用者から正当な理由なく就労を拒まれたために就労できなかった日は
労働者の責めに帰すべき理由によるものとはいえないから
(有給休暇取得の要件としての)出勤率の算定にあたっては
「出勤日数」に算入すべきものとして全労働日に含まれる
(よって今回の有給休暇の申請は有効)、
というふうに判断し、会社側の主張を退けました。

たしかに最高裁の判旨は
当たり前といえば当たり前
という感じもありますが
「有給休暇」という身近な問題で、興味深い判決がなされましたので
ご紹介した次第です。