当事務所の所属弁護士8名によるコラム(ブログ)です。

子の引渡し

例えば、離婚問題に直面しているとある夫婦の一方が
何の同意もなく当事者間の未成年者を連れて自宅を出て行ったとして
残された当事者が、子どもの引渡し を求めて家事審判を申し立てる
ということがあります。


この申立が認められた場合
相手方当事者が、任意に引き渡せば良いですが
引渡しを拒否するような場合もあります。

この場合に、どうやって強制執行を行うか。

強制的に子の引渡しを実現することができるかどうかについて
かつては見解がかなり分かれていたようですが
現在では直接強制執行が可能だと考えられ、実務上も行われています。


直接強制は大雑把な言い方をすれば公権力による実力行使です。

ただ、直接強制の具体的方法については、明確なルールがなく
実際に執行を行う執行官が公道で引渡しを実行したり
保育園で引渡しを実行するようなこともあったようです。

この問題に関し、今年
最高裁判所から全国の裁判官、執行官に
その取り扱いについて通知がなされました。

強制的な引渡しによって子どもの心が傷ついたり
プライバシーが侵害されたりすることがないよう配慮すべきだというもので
「引渡しは連れ去った親と子どもが一緒にいる場合に限り、原則自宅で行う」
という内容と報道されています。


これまでも、子どもが拒否したり
親が子どもを抱きかかえて抵抗する場面などでは
執行不能として引渡しを実現することができないこともあり
そのために保育園での引渡し等が行われることがあったのですが
今回の統一ルールにより、この方法は、原則としてできないことになります。

子の引渡しという非常にデリケートな問題に
一定の統一的なルールができたことは評価したいと思いますが
他方で、このようなルールの中で果たして強制執行が実現しうるのか
今後の運用に注目したいと思います。