当事務所の所属弁護士8名によるコラム(ブログ)です。

TPP交渉のシステムに問題あり?!

「『成長戦略』って、誰のため?(2)」を予定していましたが
今回は、急遽、「TPP」について。

TPP(環太平洋経済連携協定)ルールの主な事項は、次のとおりです。
① 産品の貿易について、すべての産品を非関税化する。
② 検疫の手続、食料品の輸入の安全性については、国際統一基準に従う。
③ サービスの輸入について、専門家資格等を共通基準とする。
④ 公共事業について、日本の事業者と海外の事業者を差別的に取り扱ってはならない。
そして、ネガティブリスト といって、
参加国が合意した例外リストに載らなければ
あらゆる品目がその対象になります。




TPPルールによると、例えば、
②について言えば、
アメリカで許可されている食品添加物(その数は日本の3倍強)や
食品の表示基準
(例えば、「遺伝子組み換え」表示はアメリカでは義務付けられていない)
が国際統一基準とされ
わが国の食の安全が著しく脅かされることになります。
国際統一基準は多数決で決められるからです。

④について言えば、
自治体が地産地消を奨励するために
学校給食の食材を地元の業者から購入すると
ルール違反ということになってしまうのです。


さらに問題なのは
TPPルールに違反したとされる場合
外国の投資をした企業が、損害の賠償を求めて、
相手国政府(自治体を含む)を
世界銀行傘下の国際紛争機関である国際投資紛争センターに
訴えることができる
という条項(ISD条項)の導入が図られていることです。

国際投資紛争センターの命令に対しては不服申立制度もありません。
このISD条項に基づき、
2011年には、スウェーデンの電力会社が
 脱原発政策によって38億ドルの損害を被った
としてドイツ政府を訴えたそうです。
低炭素車支援制度の実施を予定していた韓国政府は
アメリカの自動車業界からのISD条項による提訴を恐れ
制度の実施を見合わせたそうです。

このように、ISD条項は
一国の極めて重要な政策決定をも左右しかねない
主権を脅かす力をもっているのです。


わが国政府はすでにTPP交渉に入りましたが、
以上のように、TPPは、非常に重大な問題を孕んでいます。

にもかかわらず、協定により
交渉中はもちろん、TPPが締結された後も4年間は
交渉内容を公表することが禁止されています(秘密保持契約)。
われわれ国民には、何が議論されているか知らされないまま
交渉が進み内容が決定されてしまう
いわば白紙委任に等しい状況です。
これは
 日本国憲法の定める国民主権の根幹を揺るがす事態
と言わざるを得ません。

ともすれば、関税撤廃の対象品目に目を奪われがちですが
実は、そのシステム自体に極めて重大な問題がある以上
わが国は、このまま、
安易にTPP交渉への参加を継続すべきではないと考えます。
そして、このような観点から
われわれ国民の間で十分に議論を尽くす必要があると考えます。