当事務所の所属弁護士8名によるコラム(ブログ)です。

親子の関係

以前もこのコラムで書いたことがありますが
私は比較的多くの少年事件を担当しています。

少年が非行を行う要因としては
 学校ないし職場の環境や交友関係
 少年時代に特有の、「不良性」へのある種の憧れ
など様々なものがありますが
その一つとして重要なものに
 親子(家庭)関係
があります。
私が今までに担当してきた少年事件では
親子関係が大きな原因の1つとなっている問題が非常に多い
という印象を持っています。




親子の問題といっても、
環境的な問題(両親の離婚、死別、再婚等)から
関係性の問題(放任、過干渉等)まで様々なものがあります。
その中でも、関係性に問題を抱えている場合は
根が深いケースが多いように思います。
なぜなら、そこには、
親子関係を根底から支える「相互の信頼」がぐらついているからです。

ただし、この場合、
親個人の資質が問題となるケースもありますが、
必ずしもそればかりではありません。
私は、時の経過とそれに伴う子どもの成長や変化への
認識の不十分さであることが多いように思います。


例えば
子どもがスポーツや勉強でいい成績をとり、先生に褒められたとします。
(私の経験では、
小さいときに勉強やスポーツで非常にいい成績を取っていた少年は
驚くほど多いです)

人は誰かに認められれば、
そこに自分の確たる存在意義を見出し、
大きな自信をつけることになるでしょう。
それがさらなる飛躍への大きなエネルギーとなることも多いと思います。
親としても、子のそのような姿を見ることは、
自分のことよりも嬉しいことであり、鮮明な記憶としていつまでも残り、
自分の子どもに意識的または無意識的に
大きな期待をかけることになります。


しかし、時は経ちます。
子どもの心身の成長は、子どもによって様々です。
小学生の時にサッカーで活躍していた子が、
中学生にあがり、周りの子よりも成長がゆっくりなため、
運動能力の成長も遅れるなどということは
決して珍しいことではありません。
そして、それを一番敏感に感じるのは子ども自身であり、
自信を持っていたからこそ、悩みも大きくなります。
その結果、サッカーに興味を失ってしまうことだってあり得ます。

でも、親は都合のいいことに、
子どもの成長速度を、
自分自身の経験や他からの情報により、勝手に決めつけます。
しかもどれだけ時が経っても、
自分の子どもは永遠にサッカーが大好きだと決めつけています。


その結果、一番悩んでいる子どもに対し、
 「もっと頑張れ」
 「やればできる」
などと声をかけます。
親としては大切な子どもを励まし、元気づけているつもりですが、
既に「頑張り、やっている」子どもにとっては、
プレッシャー以外の何者でもなく、
反発し、親に自分の悩みを言えなくなります。
そして、そのことを親も感じ、とまどい、
親子間の信頼関係が次第に揺らいでいきます。


かくいう私も、つい先日、
中学生の息子に涙ながらに訴えられたことがありました。
勉強に関して、親からの期待がプレッシャーになるということでした。
私は特に期待していたわけでもなかったし、
プレッシャーをかけていた認識もありませんでした。
ただ親として子どもを応援し、
時に奮起を促すために発破をかけていただけのつもりでした。
しかし、事実として、子どもにプレッシャーを与えていたのです。

救われたのは、それを子どもが私に伝えてくれたことでした。
子どもには感謝しています。


親も人間である以上、自分勝手な感情もありますし、失敗することも当然あります。
大切なのは、
失敗を認め、子どもに対しても素直に反省の気持ちを持ち、表すこと
そして、
今の子どもの真正面を向き続けることです。
その際に基準となるのは、
 「どうせ、うちの子どもは…」
 「だってうちの子どもは…」
という感情ないし評価を持ってしまっているかどうかということになります。


単純ですが非常に難しい。
しかし、少なくともその姿勢を貫く態度を示せば、
親子の信頼関係が根底から揺らぐことはないように思います。