当事務所の所属弁護士8名によるコラム(ブログ)です。

問題はいまや、「民主主義か独裁か」

しつこいようですが、改めて秘密保護法関連の話題です。


その昔、1960(昭和35)年5月19日、安保条約の改定(新安保条約)承認のため、
安倍現首相の祖父である岸信介首相(当時)は、
自民党だけの単独強行採決に踏み切りました。

議会制民主主義を踏みにじるこの暴挙は、
新安保条約に必ずしも反対というわけでもなかった者も含め、全国民の広汎な反発を呼び、
いわゆる「60年安保闘争」が一気に盛り上がりを見せました。

その最中の、同年6月2日の文京公会堂での集会で講演を行った
中国文学者の竹内好が述べた、4つの提案のうちの一つが、
「問題はいまや安保への賛否ではなく、『民主主義か独裁か』である」
というものでした。




この60年安保闘争が最高潮に達したのは同年6月15日、
デモに参加した東大生樺美智子さんが死亡した事件がきっかけです。
この事件の発生を受けて緊急閣議が開かれ、
その席でデモ隊に対する「治安出動」を要請した岸首相らに対し、
当時の陸幕幹部は
  「無理に治安出動すれば(国民の支持を失い)自衛隊自体の存亡に関わる」
と難色を示し、また警察庁長官も
「このデモ隊は機動隊や催涙ガスの力だけでは何ともなりません。
もはや残された道は一つ。
総理ご自身が、国民の声を無視した姿勢を正すことしかありません。」
と直言したほどでした。

新安保条約は、5月19日の強行採決から1か月後に
参議院の審議を得ずに自然承認(憲法第61条)されましたが、
間もなく岸内閣は総辞職しました。
(以上、小熊英二著「民主と愛国」499頁以下より抜粋して引用させていただきました。)


今回の「秘密保護法」については、
その内容も極めて問題ですが、
今回の法律成立に関する過程もまた、
「議会制民主主義を踏みにじる暴挙」としか言いようがありません。
安倍現首相は、まさしく祖父と全く同じことを、繰り返そうとしています。

「問題はいまや、民主主義か独裁か」

およそ50年の時を経て、同じ問題が今、改めて問われています。