当事務所の所属弁護士8名によるコラム(ブログ)です。

父と子

「お前は俺に似て、嘘をつくのが下手だ。」

ご存知の方もいらっしゃると思いますが、
伊坂幸太郎さんの「重力ピエロ」という小説に出てくる父親の発言です。

登場人物は、異父兄弟の「泉水」と「春」。
「泉水」は、上記発言をした父親の実子、
「春」は、母親が性犯罪被害を受けたことにより授かった子供です。
両親は、「春」が性犯罪の結果授かった子供であることを認識しながら、出産を決意し、
生まれた「春」も自分の父親が母親を強姦した人物であることを認識します。
その上で、父親は、「春」に対して、前記発言をしました。
自分のルーツについて悩む「春」にとってはこれ以上ない救いとなり得る言葉。


さて、昨年は、性同一性障害による性別変更後(女性→男性)、
第三者から精子の提供を受けて妊娠、出産した夫婦の子が嫡出子と推定される
との判断を示した最高裁判決がありました。
血のつながりがなくても「父と子」との判断です。



この最高裁判決を受けて、
父親が元女性であったことを知ったときの子どもの苦悩が無視されている
との批判もあるようです。


しかし、私は、「泉水」と「春」の父親のように、父親として責任を全うしようとする限り、
それが子どもの救いになり得るのだと思います。
そこまでの覚悟をもって妊娠、出産を決意した両親に対して、
親のエゴだと批判することはできない。


私は、最高裁判決を評価したい。