当事務所の所属弁護士8名によるコラム(ブログ)です。

憲法とは

憲法改正の動きが活発化してきています。

ところで、憲法とは何でしょうか。

一般的には、
 「 法律の大元 」
 「 法律の親 」
といったような印象があるように思います。

しかし、憲法と法律は、その存在理由において、決定的に異なるのです。
法律は、例えば人の物を盗んだら、「窃盗罪」として、盗んだ人は処罰の対象になりますし、
誤って人に損害を与えてしまったら、行為者には賠償義務が発生するといったように、
個人に一定の強制がかかります。


では、憲法はどうでしょうか。


日本国憲法第99条 には、次のような規定があります。

「 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う 」 (憲法尊重擁護の義務)

司法試験にもよく出てくるところですが、
この規定の大切さは、何と言っても義務の対象者に「国民」が入っていないところにあります。
要するに、一部例外はありますが、
本来、憲法を守るべきは、国家であって、国民ではないのです。

なぜ、憲法尊重擁護義務の対象者に、国民が入っていないのか。
それは、憲法制定の経緯や目的にあります。
つまり、憲法は、強大な国家が弱い国民個人をないがしろにし、
その生命、自由、財産を侵害してきたという歴史的事実に対する反省を基に、
いかに国家といえども、国民の基本的な人権を守らなければならない
という、縛り(制限)を加える必要があるとの認識から、規定されたのです。

これを 立憲主義 といいます。
この立憲主義こそ、憲法の最大の価値であると思います。


ちなみに自由民主党の日本国憲法改正草案には、次のような規定があります。

「 全て国民は、この憲法を尊重しなければならない 」 (第102条第1項)

その他にも、国防義務を初め、国民に様々な義務が課せられています。


私には、護憲と改憲のどちらかが正解なのかは分かりませんが、
少なくとも現在の日本国憲法が完全無欠だなどとはまったく思っていません。
改正して盛り込むべき規定もあると思っています。


ただ、大切なことは、たとえ憲法改正の議論をするにしても、
立憲主義という、現代の世界におけるぶれてはならない大原則を
踏み外してはならないということです。
その意味で、自民党の改正草案は、スタート地点から間違っているのです。

憲法改正については、その他にも様々な問題があります。
私ももっと勉強して、憲法に対する理解を深めていきたいと思っています。