当事務所の所属弁護士8名によるコラム(ブログ)です。

死亡保険金の受領と相続

生命保険のうち “死亡保険金” は
被保険者の死亡により発生するものであることから
  「遺産」の一部として、遺産分割等の対象になるのか
などなど、いろいろな側面で、問題となります。

この点、結論からいえば
 死亡保険金の請求権は、相続によって相続人に与えられるものではなく
 保険契約にもとづき直接、保険金受取人である相続人が取得する「固有権」であり
 「遺産」には含まれない
と解するのが一般的です。

最高裁判所の判例でも同様に、
・養老保険の死亡保険金の受取人が(被保険者の)「相続人」と指定されていた場合

・生命保険ではなくて傷害保険のケースですが、保険金受取人の指定がない場合
において
 被保険者の死亡により支払われる保険金は、「遺産」には含まれないもの
とされています。


では、「遺産」そのものには該当しないとしても
 亡くなった人が掛けていた保険契約にもとづいて
 保険金受取人に支払われる保険金は
 いわば故人からの「贈与」に類似するものとして
 「特別受益」に該当する
と考えることはできないでしょうか。

これについても、最高裁判所の判例は
 「特段の事情」がない限り、原則として、特別受益とはならない
としています。
(もっとも、特段の事情がある場合は特別受益に該当する可能性があるとしていますので、
全く否定されているわけではありません。)


このように
 死亡保険金は「遺産」にも「特別受益」にも該当しない
とされるのが一般的であり、判例も同様なのですが、
それでは、
故人が生前に、多額の保険金の受取人として特定の相続人を指定し
ほかには何ら、めぼしい財産を残さずに亡くなった場合
残された他の相続人は、
多額の保険金の受取人となった特定の相続人に対し
「遺留分」を主張できるでしょうか。

この点についても
 保険金請求権が遺産にも特別受益にも該当しない
という一般論からすれば、
やはり「特段の事情」のない限りは、否定されることになるのではないか、
とおもわれます。