当事務所の所属弁護士8名によるコラム(ブログ)です。

回収する

裁判の結果、勝訴(その他和解など)して、
すぐに判決等で得た金額を回収できるかといえばそうではない。
相手が任意に支払わなければ、
強制執行といって、不動産を差し押さえて競売にかけたり、
銀行口座を差し押さえたり、
給与を差し押さえたり
といった手続きをとって、回収を図る必要がある。
ただし、相手方の所有物、利用金融機関、勤務先といった個人情報がなければ、
その実現も困難である。
 

さて、先日、メガバンクの三井住友銀行が、
差押えのために口座情報の開示を求める弁護士会照会に対して
情報を開示するという方針を示した
(今のところ大阪弁護士会との提携)。
実務の立場からいえば、画期的な動き。
ましてや、大手である三井住友銀行が行うということは、
他の金融機関への影響も大きいものと思われる。
 

今まで、銀行口座を差し押さえる場合には、
「○○銀行」だけではなく、「○○銀行☆☆支店」と、支店の特定まで必要だった。
夫婦関係にあった人や経理に携わっていた人など、一部の人を除いては、
訴訟の相手となる人の金融機関情報、特に支店情報までは
把握していないことが通常である。
その場合には、ありそうな銀行、ありそうな支店に対して空振り覚悟で行うか、
あきらめるかという選択肢になっていた。
それが、今回の方針では、
あらかじめ、銀行本店に対して照会を行っておけば、
預金口座がある支店が特定され、差押えが容易になるということである。
あるいは、「○○銀行」にあるかわからないというあいまいな状態であっても、
あるかどうかの情報開示を求められるということになる。


「裁判を起こしたところ回収の困難が予想される」という事案はそれなりに多い。
回収の困難を理由に訴訟をためらうこともあった。
しばらくは、金融機関の動きに注目である。