当事務所の所属弁護士8名によるコラム(ブログ)です。

私の読書スタイル・2

2012年1月に「私の読書スタイル」と題してコラムに載せたが
今回は、その続編である。


2012年6月の「ローマ人の物語43」(塩野七生・新潮文庫)を最後に、本を買わなくなった。
理由はいたって単純で、読みたいと思わせるような本(文庫本)がなかったからで、
この間は、専ら過去に読んだ本を読み返すことに終始した。

そんな折、北方謙三の「史記 武帝紀」の文庫版(全7巻)が
昨年の4月から今年の4月にかけて出版されたのを、今年5月に知った。
直ぐに第1巻を買って読み始めたところ
止まらなくなってしまい、あっという間に全7巻を読み終えた。

私の場合、読書は、基本的に行き帰りの電車内でするようにしているが
第7巻の最終章については、電車内で読むのは避けた。
号泣することが予測されたからである。
そして、案の定、以下のクライマックスシーンを自宅で読んだ際、大号泣した。
(電車の中で読まなくてよかった。)


小さい頃から、将来の夢を語り合い、ともに切磋琢磨した李陵と蘇武。
李陵は軍人として活躍するが
やがて、匈奴に降り、匈奴軍の指揮官として漢軍と戦うことになる。
蘇武は官僚となり、漢の使節として匈奴に赴いた際捕らわれたが
頑なに降伏を拒み、ために独り極寒の地に流される。
時を経て、過酷な運命に翻弄された2人は再会を果たすが
やがて再び別れのときがやってくる。

その場面を、以下に抜粋する。


「 ・・・・・・
別れだな、李陵。
無言の蘇武の頬に、涙が流れていた。
・・・・・・
別れだ、蘇武。
李陵は、こみあげてくるものを、なんとかこらえていた。
・・・・・・
生きた。切ないほど激しく生き、これからも生き続ける。
ともに生きた時があることだけを、いまは喜ぼう。 」

【出典】 北方謙三・著『史記 武帝紀(七)』,㈱角川春樹事務所(ハルキ文庫),2014年.