当事務所の所属弁護士8名によるコラム(ブログ)です。

憲法は権力者を縛る鎖

エドワード・スノーデン氏の告発を手助けした
アメリカのジャーナリスト(もと弁護士)であるグレン・グリーンウオルド氏の
「暴露 ― スノーデンが私に託したファイル」
という著書(新潮社、田口俊樹・濱野大道・武藤陽生訳)を読みました。

印象的だったのは、
スノーデン氏が最初のころにグリーンウオルド氏に接触した際のメールの中に、
3代アメリカ合衆国大統領であったトーマス・ジェファーソンの 
1798年の次の言葉をもじった言葉が入れてあったというエピソードです。



「権力に関わる事柄で、もはや人間への信頼を語るのはやめよう。悪さなどしないよう、権力者を憲法という鎖でしばるのだ。」



実際にスノーデン氏がグリーンウオルド氏にあてたメールでは

「権力者の欲求次第では憲法すら覆されてしまう」

といった言葉の後に、

「もはや人間への信頼を語るのはやめよう。
悪さなどしないよう、暗号という鎖で縛るのだ
NSAの通信傍受から守るという意味を込めて)」

といった言葉が出てくるのです。

ここで私が印象的に感じたのは、
彼らアメリカ国民は、極めて正当な形で、憲法というものの本質を、
裏返せば、権力というものの本質を、冷静に把握し、
理解してものをしゃべっているということに対してでした。

最近の日本では、政治家がやたらと道徳的に政治を美化してしゃべりがち
(「信頼回復」だとか「真の国際貢献」だとか「国家の品格」だとかなんとか)
なような気がしますが、そういうきれいごとで国民をけむに巻こうとする言説、
あるいは、そればかりでなくもちろん、
「国家の基本法」としての改憲の必要性を説く論調に対しても、改めて書きますが、



「権力に関わる事柄で、もはや人間への信頼を語るのはやめよう。悪さなどしないよう、権力者を憲法という鎖でしばるのだ。」



という先のジェファーソンの言葉をぶつけたいと思いました。

憲法の本質に関するこのようなエピソードのほか、このグリーンウオルド氏の著書は、
「特定秘密保護法」の施行された日本の市民社会の未来に関しても、
示唆に富んだ内容を含むものですので(ちょっぴり怖くなるぐらい)、
ぜひ一読をおすすめします。