当事務所の所属弁護士8名によるコラム(ブログ)です。

「特定秘密保護法」は廃止にするしかない(2)

前回のコラムでご紹介した『ツワネ原則』は、前文で、
「国家が保有する情報にアクセスする権利は、例外規定の少ない厳密に定められた法律によって、また独立した裁判所、国会の監視機関及びその他の独立機関による権利の監視のための法律によって保護されなければならない。」

と述べ、

原則3:国家安全保障上の理由に基づいた情報に対する権利の制限のための要件

として、

「法は、…明解であり、綿密且つ正確でなければならない。」

ことを挙げる。
その理由は、

「そうすることで、どの情報が非公開となり得るか、どの情報が開示されるべきか、そして情報に関するどのような行為が制裁の対象であるかを各人が理解できる。」

のだと述べる。
また、

原則6:「裁判所及び法廷を含む全ての監視機関、オンブズマン及び申立機関は、機密のレベルに関わらず、責任を持つ範囲に関連する、国家安全保障を含む全ての情報にアクセス権を有するべきである。」

ことを挙げる。


ところが、特定秘密保護法では、
特定秘密とは、
「我が国の安全保障(国の存立に関わる外部からの侵略等に対して国家及び国民の安全を保障することをいう。)に関する情報のうち特に秘匿することが必要であるもの」
と極めて抽象的に規定するのみである。
つまり、
特定秘密を指定する行政機関の長が上記の要件に該当する情報だ
と言えば、それが特定秘密なのである。
ツワネ原則3に反することは明らかである。

それゆえに、監視機関の役割はより重要である。
にもかかわらず、特定秘密保護法について
閣議で決定された運用基準で監視機関と定めるのは、
  • 行政機関である内閣官房に設置される情報保全監視委員会、
  • 内閣府に属する独立公文書管理監、
  • 国会内の衆参両院に設置される「情報監視審査会」
である。
そもそも行政機関がいわば身内である当の行政機関の長を厳しく監視できるのか
極めて疑わしい。

さらに問題なのは、
監視機関が必要があると認めるときは、特定秘密の指定をした行政機関の長に対して特定秘密である情報を含む資料の提出を求めることができる
としながら、運用基準では
行政機関の長が資料の提出が「我が国の安全に著しい支障を及ぼす」と判断すれば、資料の提出を拒むことができる
としている点である。
これは、秘密保護法の監視制度を骨抜きにするものである。
なぜなら、そもそも、資料が提出されなければ、
行政機関の上記判断が正当なのかどうかすらも判断できないのであるから、
結局は行政機関に資料を提出させる強制力はないに等しい。
そして、資料の提出を受けなければ、特定秘密の具体的な内容がわからないのであるから、特定秘密の指定が正当なのかどうかも判断できず、結局は監視機能を果たせないことになってしまうからである。
したがって、ツワネ原則6に反することも明らかである。


では、国会に設置された情報監視審査会は監視機能を果たすことができるのだろうか。
引き続き、次回の私のコラムで。