当事務所の所属弁護士8名によるコラム(ブログ)です。

弁護士と弁護士会

司法試験に合格し司法研修所の卒業試験に合格すると
法曹資格(裁判官、検察官、弁護士になる資格)を与えられますが、
このうち、弁護士になるには、必ずどこかの弁護士会(単位弁護士会)に
登録(入会・所属)しなければならず(同時に日本弁護士連合会会員となる。)、
また、弁護士であるためには登録していなければならず、
この意味で弁護士会は強制加入団体ということになります
(裁判官や検察官を辞めて弁護士になる場合も同様です。)。

単位弁護士会は各府県に一つずつの45
(名称は様々で、例えば、栃木県、千葉県は、
それぞれ栃木県弁護士会、千葉県弁護士会と称していますが、
群馬県、埼玉県は、それぞれ群馬弁護士会、埼玉弁護士会となっており、
「県」の字を冠しておりません。
また、神奈川県は横浜弁護士会と称しています。)、
東京都に3会(東京弁護士会、第一東京弁護士会、第二東京弁護士会)、
北海道に4会(札幌弁護士会、函館弁護士会、旭川弁護士会、釧路弁護士会)の
合計52会あり、これらの連合体が日本弁護士連合会(日弁連)です。

もちろん、どこの弁護士会に入会・登録するか選択は自由ですし、登録換えもできます。
そして、これが重要なことですが、
弁護士会には強い自治権が与えられています(弁護士自治)。
これは、国家権力の介入を許さないということです。
弁護士の地位ないし身分が国家権力の恣意により左右されるとすれば
その使命たる基本的人権の擁護は到底果たし得ないことになります。
例えば、刑事事件について、
弁護人の選任権が検察庁を所管する法務省にあるとすればどういうことになるか、
容易に想像がつくでしょう。
この点で日本司法支援センター(法テラス)が法務省の管轄とされているのは問題だと言えます
(現在、国選弁護人は法テラスの推薦で裁判所が選任しており、
事実上法テラスの推薦が必須となっています。)。

要するに、弁護士会とは、
基本的人権の擁護と社会正義の実現という弁護士の使命を全うするため、
強固な自治権を与えられた強制加入団体であって、
単なる同業者の集まりなどではなく、また、弁護士の互助組合でもないのです。

なお、必ずどこかの単位弁護士会に登録(入会・所属)していなければならないといっても、
裁判官や検察官と違って、弁護士の仕事に場所(地域)的な制限はなく、
日本全国どこででも活動することができます。
現に私など、これまで遠いところで、
青森地裁弘前支部、盛岡地裁、盛岡地裁花巻支部、仙台高裁、福島地裁、福島地裁白河支部、
水戸地裁、水戸地裁龍ヶ崎支部、水戸地裁下妻支部、宇都宮地裁、宇都宮家裁、宇都宮家裁足利支部、前橋地裁高崎支部、前橋家裁太田支部、
千葉地裁佐倉支部、横浜家裁相模原支部、
静岡家裁浜松支部、名古屋簡裁、大津家裁、
奈良地裁葛城支部、大阪地裁、大阪高裁、
松山地裁宇和島支部、長崎地裁平戸支部などに裁判で通いました。
これは一つには、当時は弁護士の数が少なかった上、
大都会に集中し偏在していたことが理由に挙げられます。
ところが、最近は、遠方に、ましてや泊りがけで裁判に出掛けるなどということは
ほとんどなくなりました。
弁護士が身近に存在するような時代になったものと一応喜ばしく感じていますが、
果たして実態は本当にそうであろうか、もう少し検証してみる必要があるかもしれません。
何事も、「過ぎたるは及ばざるが如し」です。

ところで、身近な存在、換言すれば、地域に密着した存在としては、
かつて、東京23区には、それぞれ簡易裁判所が置かれ、
民事調停委員は概ね地元(同じ区内)の弁護士が選任されていたようです。
因みに私自身が民事調停で実際に通った簡裁は、
豊島簡裁、新宿簡裁、大森簡裁等で、いずれも調停は不成立に終わったものの、
地域密着という点では雰囲気は悪くありませんでした。
然るにこれらの簡裁は、1994年、司法の効率化の名の下、
霞が関の東京簡易裁判所に統合されてしまいました。

さて、各区に簡裁が置かれていたことに対応してかどうかは分かりませんが、
東京23区には、前記単位弁護士会とは別に区ごとに弁護士の任意団体が存在します。
例えば台東区には台東区法曹会というのがあり、私もこれに所属しています。
入会要件は、
①台東区内に事務所があること
(必然的に前記東京3会のいずれかの会員ということになります)、
又は、
②台東区内に住所があること
で、私の場合、上記②の要件に該当するということで入会が認められているわけですが、
会員の中で埼玉弁護士会所属の弁護士は私1人だけです。

主な活動としては、
台東区の無料法律相談(毎週火水金の午後1時から4時まで。予約制)に
相談担当弁護士として臨むことですが、
相談者の要件は、台東区の住民であるか、職場が台東区内にあることです。
したがって、例えば、
埼玉県内に住んでいながら、職場が台東区内にあるため、
平日の日中に埼玉県内で法律相談を受けることが困難な人でも、
上記時間内に時間がとれれば、台東区の無料法律相談を受けることができるわけです。